強制送還の2つの制度を解説!退去強制と出国命令の違いは?

退去強制と出国命令って?何が違う?

入管法に定められているルールに違反した外国人に対しては、強制的に国外退去の手続きが行われます。

その国外退去の手続きには「退去強制」と「出国命令」の2種類があります。

二つの制度は、どちらも自分の国に帰らなければならないという点は同じですが、条件や手続きの流れが違います。

 

では、それぞれの制度の具体的な違いはなんでしょうか?

今回は、退去強制と出国命令について詳しく解説していきたいと思います。

 

 

目次

1.退去強制と出国命令の違い
2.   退去強制の要件
3.出国命令の要件
4.在留特別許可
5.まとめ

 

1.退去強制と出国命令の違い

退去強制と出国命令は、どちらも日本から出国しなければなりませんが、手続きの流れやその後の制限に違いがあります。

 

それぞれの手続きの流れをくらべてみましょう。

 

退去強制手続きでは、国外退去まで入管に身柄を収容されますが、出国命令では収容されることはありません。

また、もう一度日本に来る場合の入国禁止期間も出国命令制度の方が短くなっています。

 

つまり、退去強制制度で帰国するよりも出国命令制度で帰国した方が外国人にとってはお得だということです。

基本的に、ルールを違反した外国人は「退去強制」となりますが、一定の条件を満たしていれば特例として出国命令制度が適用されます。

 

<上陸拒否期間の違い>

 

次に、「退去強制」と「出国命令」、それぞれの要件や流れをくわしくみていきたいと思います。

 

2.退去強制の要件

入国管理局による摘発などでルール違反が見つかってしまうと、違反についての調査がされ、審査が行われたあとに強制送還が決定します。

この退去強制の処分を受けると、帰国後、上陸拒否期間が5年以上となります。

 

<退去強制の対象となるルール違反>

次の8つのルール違反をすると強制退去の対象になります。

 

①不法入国

パスポートを持たずに入国した

 

②不法上陸

パスポートは持っているが上陸審査を受けずに入国した

 

③不法滞在

在留期間を過ぎて在留(オーバーステイ)している

 

④不法就労

決められた就労制限のルールに違反して働いた

 

⑤不法入国や不法上陸を助けた

 

⑥売春や売春に直接関係のある業務にかかわった

 

⑦刑罰法令違反

懲役または禁錮の実刑を受けた

 

⑧麻薬・大麻取締法、あへん法、向精神薬取締法違反

これらの法に違反して有罪判決を受けた

 

<手続きの流れ>

退去強制は次のような流れ手続きが進められます。

審査の結果によって強制送還が決まったあと、審査結果に異議があれば2回まで申し出ることができます。

 

 

3.出国命令の要件

出国命令制度とは、不法残留者(オーバーステイの外国人)のうち、一定の条件を満たしていれば、収容せずに簡単な手続きによって出国させるという制度です。

これは、不法滞在者を迅速かつ効率的に出国させるための制度です。

出国命令によって出国した違反者の上陸拒否期間は1年です。

 

<出国命令の対象になる条件>

①速やかに日本から出国する意思をもって自分から入国管理局に出頭したこと

速やかに出国する意思が必要なので、在留特別許可を求めた場合には対象になりません。

また、自分から出頭することが必要なので入管や警察に摘発された場合には、退去強制の対象になります。

 

②不法残留(オーバーステイ)以外のルール違反をしていないこと

不法入国や不法上陸などをした場合には対象になりません。

 

③窃盗罪等の一定の罪により懲役または禁錮に処せられていないこと

 

④過去に退去強制や出国命令を受けて出国したことがないこと

違法滞在を繰り返している場合にはこの特例措置は認められません。

 

⑤速やかに日本から出国することが確実と見込まれること

帰国するためのパスポート、帰国費用、交通手段等を確保していることが必要です。

 

ただし、状況によって出国命令制度に当てはまらない場合もあります。

自分の要件をしっかりと知るためにも専門家に相談をすることをおすすめします。

 

<手続きの流れ>

手続きは約2~3週間で行われます。

 

 

4.在留特別許可

在留特別許可とは、本来なら日本から出国しなければいけない外国人に対して、法務大臣が特別に在留を許可するというものです。

この許可がもらえれば、引き続き日本に在留することができます。

在留特別許可の審査では、次の項目などに総合的に判断されます。

 

・なぜ在留を希望するのか

・どんな違反をしたか

・日本にいるときの素行

・家族状況や生活状況

・国内外の情勢

・許可または不許可にした場合に他に与える影響

 

具体的には次の「積極要素」「消極要素」についてそれぞれ評価し、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に在留特別許可がおりることになります。

 

<積極要素>

・日本人の子または特別永住者の子どもであること

・日本人または特別永住者との間に生まれた未成年で未婚の実子の親権を持っており、日本で相当期間同居して、監護および養育していること

・日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等または定住者と婚姻が法的に成立している場合で、夫婦として相当期間共同生活をして相互に助け合い、子どもがいるなど婚姻が安定かつ成熟していること

・日本の小・中学校に通っている実子と同居していて、監護および養育をしていること

・難病などによって日本での治療を必要としているまたは、このような治療を要する親族を監護することが必要と認められる者

・不法滞在者であると申告するため、自分から地方入国管理署に出頭したこと

・日本に長く暮らしていて、日本への定着性が認められること

・「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」または「定住者」で在留している人の扶養を受けている未成年で未婚の実子であること

・その他、人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること

 

<消極要素>

・重大犯罪等によって刑に処せられたことがあること

・入管行政の根幹にかかわる違反または反社会性の高い違反をしていること

・不正入国をしたこと

・過去に退去強制手続きを受けたことがあること

・その他の刑罰法令違反やこれに準ずる素行不良が認められること

・その他、在留状況に問題があること

 

次に、在留特別許可を申請するメリットとデメリットをみてみましょう。

<メリット>

・元の生活環境を維持できる可能性がある

・オーバーステイ以外のルール違反をしてしまっても対象となる

・摘発、逮捕を受けた場合でも申請できる

 

<デメリット>

・許可の結果が出るまでにだいたい1年以上はかかる

・入国管理局に長い間収容される可能性がある

・許可が下りなかった場合には、5年以上の上陸拒否になる

・住民登録がないので病院が実費診療になる

・許可が出るまで就労できない

・社会的に不安定な立場になってしまう

 

このように、上陸拒否期間などのメリット・デメリットをくらべて在留特別許可を申請するのか出国命令制度を利用するのかを選ぶことになります。

選ぶ際には、必ず行政書士などの専門家に相談しましょう。

 

5.まとめ

このように「退去強制」と「出国命令」は、身柄が収容されるかどうか帰国後の入国禁止期間などが変わってきます。

もちろんルール違反をしないで過ごすことが一番ですが、もしもルール違反をしてしまった場合には速やかに適切な対応をとることが大切です。

そのためには、正しい情報を知ることがとても重要です。

自分で調べるのには限界があるため、専門家にも相談するようにしましょう。

 

また、オーバーステイをしてしまったという場合にはできるだけ早く出頭してください。

そのままでい続けると逮捕されることもあるため、とても危険です。

逮捕や摘発をされてしまうと、出国命令の制度も使えません。

その後の進退の選択肢を増やすためにも、早め早めに行動することが大切です。

オーバーステイだけでなく、入管のルールに違反してしまった場合には行政書士などに相談することをおすすめします。

 

 

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